ひちへんげ

美術、旅、宣伝やらものおもい

8月の鯨

八月の鯨(1987)

大好きリリアン・ギッシュと大好きベティ・デイビスが出る

20代になってから2回見たけれど、これからの人生で何回も見るのであろう映画。

老夫婦のただの穏やかな何日かを負っただけの映画なんだけど、俳優の演技も良いし、せりふも、脚本も良い。映像も美しく何場面も記憶に残る。

今、日々、人生を闘っている人は多いと思うけれど、その中でも人生を丁寧に生きることの素晴らしさを思い出させてくれる。

 

なんとなく、「人生は短い」って気づいた、20代半ばくらいの人からオススメ。10代にはつまらないかも。

デイビスは、「痴人の愛」「イヴの総て」を観たりしたけど、その後「何がジェーンに起こったか?」を観て捨て身の演技に衝撃を受けた。なんとなく、煌びやかでドロドロした戦前くらいのハリウッドを経験した人って、その後の映画界の変化についていけなかったイメージなんだけど、そんなイメージは恐怖の厚化粧で塗りつぶしてくれた。しかも役が売れっ子子役時代を引きずってるおばあちゃん。

ギッシュも、グリフィスと組んだサイレント時代の女優ってイメージが大きいけど、「8月の鯨」では超高齢ながら熟練の演技力を自然に見せてくれる。

美しい海や、若い頃に戦死した夫の写真、古い道具、とうにこの世にいない母親の写真に挨拶すること。

ロシア皇族末裔の男性との別れや、視力を失ったリビーの癇癪などもあるけど、物語は特に大きな浮き沈みもないまま、終わりを迎え、セーラ曰く「新しいことをするには年を取りすぎている」二人が、海が見える窓を取り付けることになる。老女になっても、今を生きて、毎日を噛み締めて生きていけたら。と思う映画。